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一見さんお断り。とても太い人脈で運営させて頂いております。青森の山を登りましょう。

2015 9月

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2015/09/26

白神岳レポートの続きです。

登山で山小屋泊をする人ならアルアルなことかもしれませんが、まぁ笑い話だとしてお付き合いください。

 

ハンガーノックにやられた私がやっと山頂小屋に着いたのは、夕方6時20分くらい。

小屋の外にまで中の笑い声が聞こえてくる。

「ああ、登山者が中で宴会してるな」

と、山小屋でのリラックスタイムは諦めて戸を開いた。

 

3つのフロアからなる小さな小屋の中の最下段では、中年の男女が輪になって酒盛りをしていた。

それとは対照的に中段と上段は寝袋にすっぽりと入った登山者が静かに横になっていた。

下段の酒盛りの中心にいたメガネのオバちゃんがこちらに気づき、

 

『うえぁ、今着いたん?!』

 

と関西弁で聞いてきた。

実に明るい声に最初は癒されたものの、次々と話しかけてくるオバちゃん。

 

『なんでこんなに遅ぅなったぁん?!』

『暗くて怖かったやろ?!』

 

…なかなかのボリューム。山小屋の夜、そのテンションはあかんで、オバちゃん。

できることならもうこのオバちゃんと話したくない。

我々は半ば無視するように中段のフロアに転がり込んだ。

 

この日の山小屋は満杯だった。

我々の他にあと一人でもいたら山小屋に入ることはできなかったろう。

世の中、うまくできている。

 

上段フロアには、いかにも玄人な雰囲気の人たちが5、6名ほど就寝。

中段フロアには、男女2名、男性1人が我々を挟むように、時折寝返りを打ちながら静かに寝袋に入っていた。

そして、下段フロアには例のオバちゃんとその仲間が数人、そしてそちらとは無関係な感じの人が2名ほど就寝していたように思う。

 

明らかにこの下段のオバちゃんがうるさい。

他の登山者は眠れるはずもないほどのテンションである。

 

私は鈍い動きで夕飯のお湯を沸かし始めたのだが、あろうことか手が加熱中のコッヘルに当たり、お湯をこぼしてしまった。

シャリバテのショックからか、なんとも集中力を欠いていた。

 

『あんな〜、柱から水が伝ってくるんやけど〜』

 

下からあのオバちゃんが海坊主のように顔を出してきた。

…しまった。オバちゃんに話しかける口実を与えてしまった。

疲れているし、空腹でイライラしていたが、この狭い小屋で下手にもめるわけにもいかない。

精一杯の謝罪をした。

 

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夕飯を済ませて、我々は寝袋を取り出し、文字通り川の字になった。

下手に雑談をすれば、オバちゃんにまた絡まれる。

じっと息を潜めて下の宴会の声を聞いていた。

 

下の会話を聞けば、このオバちゃん、大阪から独りでこのヤマに来たようだ。

山小屋泊の準備を進めるうちに他の登山者と仲良しになり、そのまま宴に突入。

ダントツで酔っ払ってしまったという感じだ。

 

時刻は20時を回っていた。

下の男性がオバちゃんをそろそろ休むようになだめるも、

 

『今、何時や?! まだ20時やないか〜』

『今寝たら朝4時に起きてしまうやんか〜!』

 

…朝4時起き。結構じゃないか。

ヤマでは日没後は早々に就寝、日の出とともに起きるのが通例である。

男性がさらになだめる。

「うん、4時に起きてご飯食べて準備して6時に出発しようね」

 

『…せやな〜…』

 

どうやらなんとか落ち着いたようだ。

それを聞き届けて、私は寝る前のトイレに行くためハシゴを静かに降りた。

 

『んなっ! スパイダーマンや! スパイダーマンが降りてきよった!』

 

…しまった。見つかってしまった。

さすがに今回は目も合わせず、豪快に無視してやった。

もし私がスパイダーマンだったら、手首から糸を出してこのオバちゃんの口を永遠に塞いでやろうと思う。

 

私が小屋から50メートルほど離れたトイレから戻ると、小屋の中は消灯され、かなり落ち着いていた。

もとのポジションに戻り、ザックを枕にして横になった。

足を伸ばすと、フロアの開口部にはみ出してしまうので膝を曲げて休んだ。

この日のハンガーノックの悔しさで、なかなか寝付けはしなかったが、やっと静かな夜の訪れ…かと思われた。

 

『んふ〜っ… ぐふ〜っ…』

 

下からオバちゃんの意味不明な声が聞こえる。

 

『はぁ〜… ふぅ〜…』

 

私は悟った。

 

(オバちゃん、飲み過ぎて具合悪ぅなっとるやん!)

 

私は知らない。

この狭い小屋でゲロリンされても、私は知らない。

オバちゃんにそんなに呑ませた、オッサンが悪い。

 

このとき私は紙一重な2つのことを祈った。

 

①(オバちゃんがもっと苦しみますように)

②(頼むからここで吐かないでください)

 

ドキドキしながら1時間くらいが経ったころだろうか。

祈りが通じたのか、オバちゃんは散々苦しんだ挙句、静かになった。

ふ〜これでなんとか寝れそうだ。

…と思った矢先だった。

 

私がいるフロアの両端の登山者が、まるでシーソーを楽しむかのようにイビキ合戦を始めた。

右からのグオーに応えるように、左からのゴォー。

…全然眠れない。

人間の中には、寝てもうるさい人が一定数いる。

これだけ人が集まればそりゃ、イビキをかく人がいる。

一応、ザックの中には耳栓も入れているのだが、この狭い環境で取り出すのが億劫だ。

 

こうなったらイビキというのをまるで音楽を聴くように楽しむしかない。

 

(ほう…右の紳士のイビキは伸びのある低音ですな)

(こちらの紳士は太ってらっしゃるのか、少し苦しそうなイビキですね)

 

我ながらナイス機転だと、悦に浸りながら少しずつ眠りの世界に入っていったそのとき。

 

『んふ〜っ… ぐふ〜っ…』

 

再び、下のオバちゃんが参戦。

 

(またかいな!)

 

オバちゃんとはいえ、一応女性である。

聞きようによっては若干色っぽい声である。

 

(ちくしょう… この声の主はあのオバちゃんやで!)

 

邪念を振り払うのが大変だった。

 

その後、両脇の2名に、下のフロアからもイビキが加わり、さらにさらにマモルくんとマチヤくんまでがイビキをかき始め、小屋はイビキアーティストの大合奏となった。

特にマモルくんのイビキは他の誰にも似ないトリッキーなイビキで、これまで聞いたイビキの概念を覆された。

「このイビキは一体どうやって出してるんだ?」

と聞きながら考えていたらさらに眠れなくなった。

 

皆が静まった朝3〜4時にやっと少し眠れた気がする。

 

・・・

 

翌朝、眠いのを我慢して朝食を食べていたら、下の階から大阪のオバちゃんがヌッと顔を出した。

 

『あの〜… 私のシュラフが入ってた袋が無いんやけど…そこにありまへんか?』

 

(… そんなん知らんわ!)

 

ハンガーノックに、大阪のオバちゃん、そしてイビキ。

今回の白神岳登山は散々だった。

次回はテントも持って行こう。

プライベート空間を確保することはとても大事だと実感した。

 

帰り道は深浦町の沿岸をサイトシーイングしました。(以下画像群参照)

 

おわり。

 

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2015/09/25

シルバーウィークの真只中、世界遺産:白神山地(白神岳)へ登山しに行ってまいりました。

そしてそこで散々な体験をする羽目に。

今回はその様子をお伝えしたいと思います。

 

プライベートツアーということで、メンバーは私とマモルくんとマチヤくんの3名。

まずは私が自宅でバタバタとPC作業をしていて、十和田市での集合時間に1時間遅刻。

連休とあってか、ちょっと道路も混んでいる。

ちょっと近道かもと進んだ道は間違いで引き返す。

そんなこんなで登山口に着いたのは15時過ぎ。

予定では13時くらいだった。2時間以上のビハインド。

まぁこのメンバーなら2〜3時間で登れるだろうと、登り始めたのが15時30分だった。

 

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快調に進んでいたのだが、若干の空腹感を覚える。

「水場で給水するときに、ついでに行動食を食べよう」

そう思って水筒に2リットル補給したのだが、雑談をして行動食を食べるのを忘れた。

「まぁ山小屋まで我慢して、そこでたっぷりラーメンなりカレーなり食べよう」

そう思って先へ進んだ。

 

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急登に差し掛かった。

腹が幾度も鳴る。

パワー切れをなんとなく実感する。

「これはマジで何か食べないとマズイ感じだ」

「でもこの急坂の途中でザックを下ろすのも面倒だ、登りきったら行動食を食べよう」

そう思って脚に力を込めた。

 

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急登を登り切り、ザックからチョコレートクッキーを取り出して2枚だけ食べた。

マモルくんが黒砂糖のカケラもくれた。

まだクッキーもその他のお菓子もザックに入っていたが、どうにも貧乏性なのでセーブした。

「これくらいのカロリーがあれば、頂上まで行けるでしょ」

再び歩みを開始した。

 

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少し歩いてから変な感じがした。

意識がハッキリしてくるような感覚。

「あれ? これまでオレ、意識がモーローとしてたんだ」

「足腰だけでなく、脳にもエネルギーが足りてない」

 

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「今食べたものがエネルギーに変換されるのはいつだろう」

「きっとまだまだ先だし、あの量じゃちっとも足りない」

 

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私は歩みを早めた。

日没も迫ってきている。

行動時間を短くして山頂まで行こうと思った。

幸い、急登を越え、起伏の少ない森の長尾根に出ていた。

 

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この判断が間違いだった。

というかずっと下の水場から間違いが始まっていた。

わずかな傾斜を登るのもキツくなってきた。

息が上がるようなバテではない。

"脚が前に上がらなくなってくる"

"全身を襲う疲労感"

初めて体験する感覚である。

これがいわゆる「シャリバテ」「ハンガーノック」というやつである。

 

食料の補給が正常にされないと低血糖に陥る。

各臓器に蓄えられているブドウ糖が不足するとエネルギーを蓄えることができなくなる。

ブドウ糖の源は、主に炭水化物や糖質。

私はこれを十分に補給していなかったのである。

 

私はこのとき、驚くほどの虚脱感に支配されていた。

 

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登山でここまでの空腹状態になったことはなかった。

昨年の秋の東北百名山の旅ではどんな状況だろうが、

「腹が3回鳴ったらおにぎり1個分の補給をする」

と決めていた。

連日の登山をいかにスムーズにこなすかということを常に念頭に置き、余念がなかった。

おかげで飯豊山朝日岳の連続する難山行を健やかにこなせた。

 

今回はというと…以前にも登った白神岳と思ってナメていた。

 

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「このままだと二人に迷惑がかかる」

ここでヘッドライトを準備して、マモルくん&マチヤくんを先に行かせた。

暗がりの中、チョコレートクッキーを一気に5、6枚食べて、飴を舐めた。

さぁ行くぞと心で叫んでも、体が思うように進まない。

ストックもろくに突くことができずに、引きずって歩いた。

二人の鈴の音がどんどん遠ざかっていった。

「なるほど、これがシャリバテか」

この日の自分の行動を悔いながら、ひたすらこの大きな虚脱感を噛み締めた。

 

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あたりはすっかり暗くなり、濃いガスが立ち込め始めた。

ヘッドライトで前方を照らすも視界は2〜3メートルといったところ。

まるで亡霊のようにゆっくりと歩いた。

頂上付近の山小屋付近に差し掛かると、2つのライトがこちらに向けられて待っていてくれた。

ほっと一安心。なんとかここまで来れた。

あとは山小屋でゆっくり休もう。

 

…しかし、この山小屋でも困難は待ち受けているのだった。

 

つづく…